明川 文保 – DEVNET INTERNATIONAL 会長兼 CEO
岸田文雄首相は1日、ラジオ番組で、今年は日中国交正常化50周年に当たると述べ、「祝賀ムードだが、現状を見ると緊張感を持って関係を安定させていくことが重要だ」と語った。
日本外交の実力が問われる年となるだろう。
首相は、中国が活発な活動を続ける尖閣諸島周辺や、人権問題が残る香港、新疆ウイグル自治区などに触れ、「しっかり問題を提起していく」と強調した。一方で、中国との関係悪化は避けたいとし、「経済関係も考慮して関係を安定させなければならない」と述べた。
同氏はまた、「北京オリンピック後の将来がどうなるのか、雰囲気がどうなるのかを見極める必要がある」と述べた。
日本政府は2月の北京五輪・パラリンピックに閣僚ら政府高官を派遣しないことを決めた。だが、最大の貿易相手国である中国に配慮し、新疆ウイグル自治区や香港の人権問題を取り上げることは控えている。中国外務省報道官は今回の対応について、米豪相手と異なり「強い不満と断固たる反対」という表現は使わなかった。東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長職に就く橋本聖子参院議員の来訪を「歓迎する」とさえ述べている。中国としては日本との関係を悪化させたくないのだ。
習近平国家主席の国賓来日は依然延期されている。しかし、岸田首相は就任直後の昨年10月8日、習近平国家主席との電話会談で「建設的で安定した関係を共に築かなければならない」と述べ、習主席も日中関係の発展への支持と意欲を示した。日中両国の意識調査では、日中関係を「重要」「どちらかといえば重要」と回答した人が3分の2以上を占めている。日中経済協力の必要性も同様だ。9月の建国50周年も日中関係の発展にとって重要だ。その前に岸田首相は7月の参院選に勝利しなければならない。
先週発表された岸田内閣の支持率は51.7%で、政権発足以来上昇傾向にある。新型コロナウイルスへの「先制対策」が国民から高く評価されているためだ。しかし、世界で猛威を振るう新型コロナウイルス変異種オミクロン株の感染拡大は日本でも急速に進み、事実上「第6波」に突入している。今後の流行は避けられず、岸田首相が失策をすれば支持率は急落する。次回7月の参院選は昨年の衆院選に続く国政選挙であり、岸田首相が勝利すれば少なくとも3年間の本格的安定政権が実現するかもしれない。岸田自民党と同じく憲法改正に積極的な日本維新の会は参院選で党勢拡大を狙っている。選挙結果次第では、念願の憲法改正も現実味を帯びてくるかもしれない。岸田首相にとって2022年は勝負の年となるはずだ。